top of page

挑発

 

「なあ、セフィロスって自分でしたりする……?」

 はあ、はあ、という2つの荒い息遣いだけが響く空間で、ぽつりとザックスが言った。

 ミッドガル標準時23時を少し過ぎた頃、2人は今夜も愛を確かめるべくベッドインした。2人抱き合いペッティングから始め、ザックスがセフィロスをまさに組み敷いた時だった。

 

「……なんだいきなり。する、というのは、そういう事か……?」

「うん、ひとりエッチ。なんか、セフィロスってそういうの淡白そうだな~って思ってさ」

「……お前にこうして組み敷かれて、文句も言っていないだろう?」

「だから、ひとりではするのか気になるの」

「………」

「どうなんだ? 教えてくれよ」

 

 ザックスはかねてから知りたかった。自分が組み敷く時以外、いつも冷静で落ち着いていて、余裕を見せつける彼が、自分の事を考えながら自らを慰める事があるのか。想像の中の自分に欲情してくれるのか……。

「……お前はどうなんだ……?」

 セフィロスは切り返す。自分だけが答えるなんてなんだか癪だと思った。

「俺は勿論、セフィに会えない時にはお前をオカズにしてしてるよ」

「……そうか……」

 セフィロスは少し顔を赤らめた。

「さあ、今度はお前が答える番だぜ」

 セフィロスはどう答えたものかと思案する。言っても言わなくても、結果は同じになる気がする。

「……ザックス、お前おれを何だと思っている……? おれもまだ20代の男だ。……察しろ……」

 うお、マジか!? とザックスが好奇に満ちた目で見てくる。なんだか居た堪れなくなったセフィロスは、首を横向けて視線を外す。

「で? オカズは何なんだ?」

 セフィロスは答えることを逡巡したが、ふといたずらを思いつく。

「勿論、お前とヤってる時を想像してる」

 妖艶に微笑み、ハッキリと答えてやる。たまにはこいつを手玉に取ってみたい。

「う……セフィ、それ反則……」

 エロすぎ、と顔を真っ赤にするザックス。いたずらは成功したらしい。しかし、ザックスもしぶとかった。これしきで主導権を渡しはしない。

「じゃあさ、今、自分でやって見せてよ」

 ニヤリと笑ってザックスがセフィロスを挑発する。

「……ああ、まあ良いだろう。……見せてやる」

 セフィロスは挑発に乗った。

 

 ちゅく、ちゅく、と規則的に濡れた淫靡な音が響く。そこに忙しない息遣いが重なる。

 セフィロスはザックスに見えるように大きく足を開いだ状態で仰向けになり、自らの砲身を慰めていた。

「ん……ふ……ぁ……」

 燐光を放つ碧の瞳は今は閉じられ、眉間は切なそうにひそめられている。

「セフィ、……どうした、イけないのか?」

 問いかけるザックスの声は、まさか見られる日が来るなんて思いもよらなかったセフィロスの痴態に煽られ、かすれたものになった。

「ん……んぁ……なんか、おかしい……」

 セフィロスは薄く目を開け、自らを扱く手は休めずに呟く。そう、今日はなんだか調子がおかしい。いつもならばとっくに放出を果たしている頃合いなのに、まだイけない。何が違うんだろうか……?

 ゆるゆると続く快感に、内心焦りを感じ出す。早く、早くイきたい……。

 

 色っぽい吐息を漏らしながら自慰に耽るセフィロスの姿を堪能しつつ、ザックスはその原因を思いつく。恐らく、見られている事でリラックスできず、達する事ができないのだと。

「セフィ、ちょっと待っててな」

 そう言って取ってきたのは、黒の薄手のタオルだった。

「目、つぶって」

 セフィロスは何をされるのかが分からず、最初は戸惑ってされるがままだったが、目隠しをされようとしている事を悟ると、とたんに抵抗を始めた。

「やめろ、何をする!」

「こら、じっとしてろって。お前が集中できるようにしてやるだけだ」

 あっという間に頭の後ろでタオルを縛り、目隠しをしてしまうザックス。

「これで、集中できるだろ?ほら、続きをしてくれ」

 そっと耳元で囁いて、セフィロスの蜜に濡れた左手を取ると、彼自身へとそっと導いてやった。

 

 

 効果はてき面だった。セフィロスはザックスの存在を忘れてしまったかのように乱れる。利き手で砲身を擦り、右手では先端を撫で回す。時折自ら乳首をつねっては上体をくねらせる様が、ザックスをどんどん追い詰めて行った。

「はぁ……っく! ザックス、ザックス……・」

 自分の名前を切なげに呼びながら、夢中で自慰行為に耽るセフィロス。そのいじらしさに、ザックスは心をぎゅっと捕まれる。愛おしさが溢れ出す。

「あっ……あ! イく、イく……──────ッ……」

 竿を擦り袋を揉んで、自らを追い詰めたセフィロスがついに欲望を解放した。声にならない悲鳴をあげて、体をビクビクと震わせる。

 やがて興奮が収まると、はあ、はあと胸を上下させて酸素を貪る。

「へえ、セフィってそうやるのが好きなんだな」

 今度からそうやっていじってあげる。ザックスは卑猥にセフィロスの耳に吹き込む。セフィロスはというと、目隠しを取ってザックスを見つめ、不敵に挑発してやる。

 ────これで満足したか……?

 まさか!

 ザックスはすぐさまその色白の肢体に覆いかぶさる。腹部に白い飛沫が散り、なんとも艶かしい状態になっている体を貪りにかかる。セフィロスの痴態に散々煽られ、ザックスももう限界だった。

「今度は、後ろのやり方も教えてやろうか……?」

「……遠慮する。それはお前が抱けばいいだけの事だ……」

 情事の合間の睦言を交わしながら、2つの肢体がもつれ合う。今夜もまた、2人の長い夜は始まったばかり。

​Fin

​20150829

bottom of page