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ルーセフィからのクラセフィ

新羅時代設定ですが一部捏造あり。というかパラレルに近い。

大切な主人であるルーファウスと引き離されたセフィロスが連合軍トップのクラウドさんとなんやかんやする話。

後々R18表現出てきますのでご注意を。

 

【ご注意ください】

・ルーセフィからのクラセフィです。

・戦闘時の流血表現があります。

・具体的な性的描写はクラセフィのみです。

・強姦表現があります。

連載中です。

 

夜明け前

 ドォン……と遠くで爆発音が聞こえる。

「ルー、速く!」

 バタバタと駆ける二人分の足音。他に人はおらず、廊下は静まりかえっていた。水道管が破裂して水たまりがあちこちにできていて、時折水の落ちる音がするだけ。電気系統も既にやられたのだろう、ビル内は薄暗い。

 世界各地に存在する反神羅側の人々。それらの代表たちが手を組んで武装し、ミッドガルに攻め込んできた。目標は神羅の壊滅。ミッドガル以外の都市国家政府も反神羅組織を支援し、彼らは連合軍となった。

 ルーファウスを連れて退却するセフィロス。ミッションでジュノンに出向いている最中に事態を知らされた。慌てて帰りついた時にはもう、ビルまで追手が迫っていたのだった。

「ルー、ここに隠れて。傷を見せてくれ」

 ドアが開いたままになっている会議室に入り、ルーファウスを座らせる。応急処置を施しただけの腹の傷が血を流していた。痛々しさに、セフィロスは眉を下げる。

 ビルに着いてすぐ、セフィロスは主人たるルーファウスに連絡を入れた。そして合流した時には既に主人は手負いとなっていたのだ。ビル内で銃撃戦になり、護衛のタークスは全滅。最後に残ったツォンに一人で逃げるよう言われ、何とか逃げおおせたと言う。

「すまない、俺がずっとついていられれば……」

 セフィロスがルーファウスのシャツを割いて止血をし直しながらぽつりと言った。

「きみのせいではない。きみはただ、命令の通りミッションに出向いていたのだから」

「ルー……」

「……レノもルードもイリーナも、逝ってしまった。……悪いことをした」

 恐らくは、ツォンも。自分がだけが生き残ってしまった。だがこの命も、もう長くはないかもしれない。ルーファウスは静かに微笑んだ。体が、重い。どっと冷汗が噴き出してくる。失血しすぎている。

「……ルー、そろそろ行こう」

 セフィロスがルーファウスの顔色を覗き込む。暗がりでよく見えないが、額に触るとびっしりと汗が浮いていた。

「……本当にすまない。もう……MPが無いんだ」

 ルーファウスにずっとケアルガをかけてきていたが、もはやケアルをかける魔力すらない。最後のエーテルも飲んでしまった。

「大丈夫だ。世話をかけてすまないな」

 ルーファウスはセフィロスの頬にそっとキスをした。セフィロスは切ない表情でそれを受け、すり、とルーファウスにすり寄ると、主人の体を抱えて立ち上がる。

「捕まっていてくれ」

 セフィロスは廊下に出て走り出した。一人抱えているためさっきほどは早く走れないが、それでも懸命に駆ける。そして非常階段口を開け、鉄でできた足場の階段を昇り始めた。停電しているのだ。ここからに20階分、上がっていくしかない。目指しているのはヘリポート。スキッフでルーファウスを連れて逃げる。

「セフィ……、ダメだったら、きみだけでも逃げなさい」

「嫌だ!」

 敵に見つからないように小声で話しつつも、セフィロスの語気は怒ったように荒かった。

 自分を、置いていくと言うのか。自分にはルーファウスしかいないのに。彼こそが、俺の人生の全てなのに。

「その時は、俺も共に逝く」

 ルーファウスはただ、静かに苦笑した。

 

 遂に最上階に辿り着き、セフィロスがぎぎい、と軋んだ音を立てて扉を開け放つ。目の前に光が広がり、二人は眩しさに目を眇めた。今まで暗闇の中にずっといたから適応に数秒かかった。相変わらず曇天のミッドガル。それでもビル内よりはずっとずっと明るい。

「あのスキッフに乗るぞ」

 ルーファウスを抱え直し、スキッフへと駆けだした、その時だった。

「動くな!」

 背後から、声が響いた。途端に複数人の気配を感じる。

「副社長を下ろせ! 二人とも手を上げろ!」

 扉を開けた時には、気配を感じなかったのに。セフィロスは下唇を噛み締めた。もう、二人とも疲弊しきっていて、通常通りの実力など出せていない。

 セフィロスが言われた通りにする。いつ正宗を抜こうか。刀さえ抜いてしまえば、一陣で切り殺せる人数だ。

 だが、手を上げるよりも早く、セフィロスは右の膝を撃ち抜かれた。

「ぐあっ……!」

 そのまま体が傾ぎ、頽れる。そこへすかさずもう一発撃ち込まれた。今度は左の脛だった。

「セフィ!」

 ルーファウスが両手を頭の後ろに組み、地面に膝を着いた体勢で叫ぶ。

「この子は助けてくれ! 彼は何も悪くない!」

「悪くない? ハッ! こいつが一体今まで何人殺してきたと思っている!」

 ジャキ、と複数のマシンガンの銃口が、地面で丸くなって痛みに苦しむセフィロスの頭を狙う。

「全て神羅の命令だ! この子の意思じゃない! 彼は……神羅に生み出された兵器だ……」

「ルー……」

 セフィロスがルーファウスに手を伸ばす。

「少しだけ時間をくれ」

 ルーファウスは、脚の痛みで動けないセフィロスの元に近づくと、そっと頬を撫でた。腹の傷口から血が溢れ、破れた上着の裾から滴る。

「セフィ……ここまでありがとう」

「……ルー? ルーッ!?」

 ドサリ、とルーファウスが倒れる。セフィロスは腕で這いずり、仰向けになったルーファウスの胸に縋り付く。

「嫌だルー! ルーーー!!」

 セフィロスの涙がルーファウスの青白くなった頬を濡らした。荒い息をつきながら、冷や汗を流す。

「セフィ……私と神羅のことは、忘れなさい」

 見開かれる魔光眼。引き絞られた黒目がルーファウスに訴える。また新しい涙が盛りあがってきた。

「嫌だと言っている!」

「きみはきみの人生を歩みなさい。……今までありがとう。きみを愛することができて、私はとても幸せだった」

 胸元に伏せて嗚咽を漏らして泣き縋る銀色の頭。それを優しく抱きしめる腕が徐々に力をなくしていく。

「愛する人を、探すんだよ。……幸せになりなさい」

「ルー! ルー!!」

 ルーファウスの愛した銀糸が、血を吸ってどす黒く染まっていく。

「時間だ」

 セフィロスとルーファウスを銃が囲む。

「……この子に見せないでくれ」

 ルーファウスの最後の望みを連合軍は聞き入れた。泣き縋るセフィロスを引き剥がす。

「離せ! 嫌だ! 一緒に逝かせてくれ! ……ッ!」

 抵抗するセフィロスの鳩尾にマシンガンの柄が叩き込まれる。一瞬の硬直の後、ぐったりと抱く腕の中に昏倒した。

「さよならだ、セフィロス」

 ルーファウスは目を閉じた。運ばれていくセフィロス。そして一斉に銃声が響き渡った。

 

 セフィロスは、ルーファウスと神羅を失った。

 そしてこの時から、彼の修羅の道が始まった。


 

 

 『セフィロス、セフィ……泣くな、大丈夫だよ、私はここにいる……』

 ルー。どこだ。お前の姿が見えない。今すぐここに来て抱きしめてくれ。ルー、ルー……

 

「あいつは軍神として数々のミッションに参加し、大勢の罪なき人間を殺めてきた。銃殺刑が妥当だろう」

 連合軍の総司令部。そこでは今、セフィロスの処遇について会議が開かれていた。

「しかし、彼はルーファウスの言った通り神羅の人形だ。それは我々のデータでだって掴んでいる」

 喧々諤々(けんけんがくがく)のやり取りが続く。それを中央の椅子に座り、じっと聞いている男がいた。

 クラウド・ストライフ。ニブルヘイム出身の若い男だった。見る者全てを魅了する美しい相貌に見事な金髪碧眼。この男こそ、若くしてこの連合軍を率いる総司令官だ。 

「彼の戦闘能力は折り紙つきだ。我々の一員に加えたら良い」

 また別の者が口を開く。クラウドはやり取りをじっと聞いていたが、おもむろに口を開いた。

「あれの戦闘能力が高いことは知っている。だが、俺はこの目で確かめたい」

 その場の全員がクラウドを見た。青い相貌を愉快そうに眇めて、クラウドが続ける。

「あいつの回復を待って俺と勝負させる。それから決定する」

 クラウドは場を開くと、セフィロスを収容している部屋へ向かった。

 

 セフィロスの部屋の前には、警備兵が二人配置されていた。クラウドを見ると、二人は敬礼する。クラウドはそれに答礼してからドアを開けた。

 セフィロスは部屋の真ん中に置かれた大きめの寝台に寝かされていた。服を脱がされ、至る所に包帯が巻かれている。両足の銃槍にも手当がなされていた。

「ケアルガ」

 クラウドが短く詠唱すると、青い光が小さくセフィロスの体を包む。いくらか呼吸が楽そうになった体に、次はリジェネをかけた。

「う……」

 セフィロスの規則的だった呼吸が乱れ、銀の睫毛が震えた。現れたのは魔晄の瞳。

「気分はどうだ」

 クラウドを見つめてセフィロスははて、と思う。自分はどこにいるのか、この男は誰か。……ルーファウスはどこにいるのか。

 そして次の瞬間、自分の身に起こったことを思い出した。

「……お前は誰だ……ッ!」

「動くな。まだ傷が癒えていない。お前は二日間眠っていた」

 クラウドはクシャリとセフィロスの前髪を撫でた。

「気安く俺に触れるな」

「へえ、捕虜のくせにでかい態度だな」

 セフィロスがクラウドを睨みつける。

「ここはどこだ」

「連合軍の総司令部」

「なぜ俺を生かした!」

「さあ、利用価値があるかと思ってね」

 セフィロスは唇を噛んだ。自分は敵の捕虜となったらしい。

「ルーファウスはどこだ……」

 きっともう絶望的だと思うが、一縷(いちる)の望みにかけてセフィロスが尋ねる。しかし、帰ってきた答えは無情だった。

「処刑した」

 セフィロスはガクリと全身の力が抜けた。

「……殺せ。俺を生かしても何にもなるまい。既に神羅は落ちたのだろう」

 愛する主人と居場所を失って尚、生きる意味など何もない。

「それを決めるのは俺だ」

「……俺に屈辱の生を生きろと言うのか」

「……早く回復しろ。そして俺と戦え。話はそれからだ」

 もう自分には戦う意味などない、と突っぱねようとした心を見透かしたのか、クラウドが付け加えた。

「お前の大切な主人を処刑するよう指示したのは俺だよ」

 縦長の瞳孔が引き絞られる。らんらんと輝く瞳に怒りの炎を燃やし、セフィロスはクラウドを見た。

「貴様……殺してやる! ……ッ!」

 跳ね起き、掴みかかろうとしたが、途端に両足を激痛が襲い動けなくなった。

「ああ、楽しみだな。早く動けるようになれ」

 主人の敵を取りたいだろう? クラウドは意地悪く笑って、部屋を後にした。

 

 それから一週間の間、セフィロスは療養期間を過ごした。ルーファウスのところに逝かせてくれと食事を拒んだが、無理やり口に押し込まれ、吐けば点滴を打たれた。クラウドは毎日セフィロスのもとにやって来て、回復魔法をかけた。

 こうしてセフィロスの体は無理矢理に回復させられた。すっかり歩けるようになったある日の昼下がり、セフィロスの部屋に四人の衛兵が入って来た。

「……なんだ」

「これから出かけるぞ」

 衛兵はそう言って、セフィロスの前で黒い布を取り出す。何かと訝しんでいたら、布を目に当てられ、頭の後ろで結ばれた。

「なんのマネだ……」

「お前を外に連れ出さないといけないからな」

 大方、建物の内部構造を把握されないようにとの目隠しだろう。逃がさないためか、復讐を恐れてか。クラウドの挑発的な笑みが浮かぶようだ。衛兵は続いてセフィロスの腕を後ろ手にして手錠をかける。足首にも、金属と思しき冷たい感触。

「立て」

 寝台から体を支えられながら引き起こされる。じゃらり、と足元の金属が音を立てた。

 部屋から連れ出されたセフィロスは長い廊下を歩かされる。逃げられないようにだろう、左右一人ずつに両脇を抱えられ、前も後ろも兵士にガードされていた。

 そもそも、足首には枷が嵌められておりその間を鎖が繋いでいるから、逃げることなどできない。大股で歩くことすらままならないというのに。徹底した警戒ぶりに、セフィロスはため息をつく。

「速いか?」

 衛兵に、歩く速度を気遣う声をかけられる。

「……問題ない」

 セフィロスは無表情のまま答え、促されるまま、長い長い廊下を歩いて行った。建物の中を右へ曲がり左へ曲がり。最も本人は、ここが廊下だということは分かっていない。ただ、促されるままに歩くしかなかった。そのうち、衛兵が歩みを止める。電子的な音がしたかと思うと、重力を感じた。セフィロスはエレベータ―に乗せられた。

「もうすぐだ」

 それからそう歩かないうちに、車だろうか、乗り物に押し込めれ、それはセフィロスと衛兵らを乗せて発車した。

 

「随分素敵な格好じゃないか」

 どのくらい走っただろうか。目隠しのせいで外の景色も見えないまま、両側を兵士に固められてひたすら揺られた。着いたぞ、と声をかけられ、車から降ろされたセフィロスに突然声がかけられた。この声はクラウドだ。

「手荒で悪かったな。今度からは俺が抱いて運んでやるよ」

「……遠慮する」

 頭の後ろの結び目を解かれ、するりと布が落ちる。目を開くと、そこはミッドガルから少し離れた荒地だった。あの日と、ルーファウスと引き離された日と同じ、曇天だった。

「鎖を外せ」

 クラウドの命令で、衛兵たちがセフィロスの拘束を外していく。手錠を外され、ガチャリと音を立てて足枷も外された。

「準備運動しろよ」

 足元に、ひゅん、と獲物を投げられた。妖刀正宗。数々の戦(いくさ)、そしてルーファウスの護衛時、いつも自分と共にあった相棒とも言える刀。

 セフィロスはゆっくりと踏み出し、静かに正宗を持ち上げる。手にしっくりとなじむ感触。そして力がみなぎるような感覚。肩を回し、足を開き、かるく正宗を振ってから、上段に構える。

「ルールは簡単。殺るか殺られるか」

 クラウドは大きな幅広剣、バスターソードを肩に担ぎながら言う。

「あんたが勝てばルーファウスの敵(かたき)も取れるし、どこへでも好きなところに行け。ただし……、あんたが負けたら俺に従ってもらう」

 セフィロスはクラウドを睨んだままだ。

「ま、従うと言っても、悪いようにはしないさ。良い条件だろ?」

 ニヤリ、とクラウドが笑い、バスターソードを構える。

 逃げることはできない。仮に周りを兵士に囲まれておらず、逃走ルートを確保できていたとしても、セフィロスは戦うことを選んだだろう。それは戦士としての、ルーファウスに仕える者としての、最後の矜持だった。

「来い」

 クラウドの声を合図に、戦闘が始まった。

 

 ガキィン! と、剣と剣がぶつかる音と共に火花が散る。グググと押し合うも力は互角で、双方同じタイミングで後ろに飛びのく。

「へえ、さすが英雄殿。あぁ、『元』か」

「減らず口を!」

 セフィロスが思い切り斬りかかるも、クラウドは身軽に跳んで躱す。それならばと鋭い剣戟を飛ばす。地面が抉れ、砂埃が舞った。

「……ッ!」

 クラウドの攻撃がセフィロスの頬を掠り、一筋の血が流れた。

「ありゃ、しっかり避けろよ。綺麗な顔が台無し」

 クスクスと笑うクラウド、追いかけるセフィロス。今度はセフィロスの刀がクラウドの肩に突き立てられる。

「っぐ! 痛いじゃん」

 クラウドは目を眇め、身を翻して刀を抜いた。傷口から地面へと血が滴る。

「ルーファウスの敵だ!」

 セフィロスが思い切り駆け出し、クラウドめがけて八刀一閃を叩き込む。しかし、それはクラウドを捕らえることはできなかった。

「甘い」

 はっとしたときには遅かった。クラウドの全身が青い光に包まれる。そして叩き込まれた超究武神覇斬。まるで舞うように青く発光する体が宙を駆け、合体剣がバラバラになってセフィロスを襲う。

「────────ッ!!!!」

 ガクリ、とその場に頽れるセフィロス。

「勝負あったな」

 ジャキン、とバスターソードがセフィロスの首元に突き付けられる。セフィロスは負けたのだ。

「……殺せ」

 ぽつりと呟いたセフィロスの願いは、やはり聞き入れられなかった。

「はっ! だめだね! セフィロス、あんたの負けだ!……約束通り、俺に従え!」

 グイッと二の腕を掴まれ、無理やり引き起こされる。

「こいつを連れて行け! 風呂に入れて体を磨け。女のように全身に香油を塗り込み、髪を艶が出るまで梳くんだ!」

「俺をどうする気だ……!」

 地面に膝をついたまま、怒鳴り睨みつける碧の瞳。複数の兵士に抑え込まれ、拘束されながらも必死で睨み続けるその瞳を、蒼い瞳が見つめ返す。そしてその優雅な口元から、残酷な宣言が下される。

「今、この瞬間から、あんたの主人は俺だ」

 目の前が真っ暗になる思いだった。自分にとって、主人とはルーファウス一人だけだ。彼のために自分は作られたというのに。こんな男に飼い殺されるというのか。ルーファウスを殺すよう命じたこの男に。

 クラウドは不敵な笑みを浮かべたまま、右手をかざした。その腕にはマテリアが嵌っている。

「スリプル」

 結局、自分は弄ばれたのだとセフィロスは悟った。最初からストップでもミニマムでも魔法を使って自分をねじ伏せればいいものを、わざと剣で戦ったのだ。こちらはマテリアを取り上げられているから。

 絶望に沈む思考も、やがて襲い来る睡魔の中に溶けていった。

Please wait......

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